全社員が喜んだ超シンプル顧客管理システムは、いかに誕生したか?

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現場の目線に寄り添った「本当に使いやすいシステム」を目指して

東京・渋谷に本社を構え、ビルメンテナンス・クリーニング事業を展開している株式会社アークビルサービス。同社の田中社長とユーワークスの吉本は、東京中小企業家同友会の活動を通じて交流を重ねていましたが、顧客管理システムのリニューアルを依頼されたのは2012年の12月のことでした。「顧客管理システムが使いにくく、現場が困っている。相談に乗ってくれないかな?」とおっしゃる田中社長は、誰よりも社員思いの経営者。その気持ちに応えるべく、早速吉本は2013年1月から、マネージメント事業部課長代理・片山さんを交えた本格的な打ち合わせをスタートしました。「以前の顧客管理システムを開発したのは別の会社なのですが、機能が複雑すぎて現場の人間が使いこなせないものでした」と、片山さんは言います。「私たちの希望をそのまま受け入れて作ってもらった結果、不必要な機能だらけになってしまったんです。顧客情報の管理や請求書作成、現場作業のスケジュール管理などいろんな機能を贅沢に詰め込んだものの、どれも中途半端になってしまって……。だから今回は、パソコン操作に慣れていない現場作業員にも使いやすいシステムをお願いしました」。

 

正直『ちょっとしつこいな』と思うほど、緻密な打ち合わせでしたね(笑)

「まず驚いたのは、吉本さんが毎週欠かさず打ち合わせにやってきたことです」と、片山さんはプロジェクト序盤を振り返ります。「現状のシステムが持つ課題や、当社の業務フローなど、とにかく事細かにヒアリングを受けました。その作業だけで丸1ヶ月はかかりました。正直『ちょっとしつこいな』と思うほど緻密な打ち合わせでしたね(笑)」。長いヒアリングを終えて、そこからようやく具体的な仕様決めが始まります。そこでも、吉本の粘り強さは変わりませんでした。「欲張って吉本さんに『こんな機能もほしい』と希望を伝えると、『本当にその機能は必要ですか? かえって使いにくくなりませんか?』と念を押されるんです。システムの規模が大きくなるほどユーワークスさんは儲かるはずなんですが(笑)、でも考えてみると確かに吉本さんの言う通りなんですね。そこで私たちも吉本さんの意見を受けて、『じゃあ、こんな機能ならどうですか』と提案する。そんな風にディスカッションを重ねることで、本当に必要な機能だけを備えたシステムが出来上がっていきました」。

 

「Excelで十分な業務なら、システムを作る必要はない」

「システムの抱える問題は多くの場合、システム自体のクオリティではなく、開発会社と顧客のコミュニケーションにあります」――プロジェクトマネジメントを手がけた吉本は、そう語ります。「どんなに優れたシステムでも、使う人のITリテラシーや、会社の業務の流れに合っていなければ使いこなせません。だから今回のプロジェクトでは、使う人自身にシステムを理解してもらうことを徹底しました。毎週ヒアリングに訪問したのもそのためですし、仕様を決めるたびに『この機能は何のためにあるのか。どう使うのか』をまとめたドキュメントをお見せしながら説明をおこないました」。その結果仕上がったのは、極めてシンプルなシステム。「これは僕のポリシーなのですが、お客様の規模と比べて必要以上のコストをかけたシステムは作るべきではないと思っています。極端な話、Excelで十分な業務ならシステムを作る必要はないですし、そう伝えますね。アークビルサービス様とは長いおつきあいがしたいので、無駄に豪華なシステムを作って利益を上げるようなことはしたくありませんでした」

 

人間関係のいいプロジェクトは、顧客もパートナーも幸せにする

完成した顧客管理システムは、これまでになく使いやすいものとなりました。多くの人にとってなじみ深い、Facebookやブログに近いインターフェースを導入し、入力項目は可能な限り減らす。日記を書くような感覚で自由に情報を書き込むことができ、現場スタッフも気軽に操作できるようになりました。「シンプルな見た目にすることにこだわって開発しました」と言うのは、ユーワークスのパートナーであるエンジニア・伊谷(現・株式会社エイミー代表)。「『シンプルなシステム』というコンセプトが最初から決まっていたので、途中参加でしたが仕事はすごくやりやすかったですよ。ユーワークスさんの案件はいつも顧客との人間関係がいいので、エンジニアとしてもありがたいんです」。――システムは2013年6月から段階的に稼働を開始。その成果を、片山さんは次のように話してくれました。「現場からの評価は上々ですよ。リアルタイムに思いついた情報を追加できるシステムなので、今までなら取りこぼしていた顧客情報も全社員で共有できるようになり、情報の行き違いなども激減。コストも最低限に抑えられましたし、社長ともども大変満足しています」。

 

取材を終えて、わたしたちが感じた事

終始なごやかな雰囲気で進んだ今回の取材。開発会社とクライアント、という枠を超えた温かい人間関係が、今回のプロジェクトを通じて生まれたように思います。「意見を交換しながらシステムを作り上げていくプロセスが、とても楽しかったですね」という片山さんの言葉が、とても印象的でした。


株式会社アークビルサービス マネージメント事業部課長代理 片山 豪貴さま