ユーワークスはVRFシステムの最適化を競う「第二回 電脳建築最適化 世界選手権」において見事総合優勝を果たしました。チームメンバーは入社1~2年目の若い社員に限定。テストやミーティングなど試行錯誤を繰り返して大会本番に臨みましたが、最高の結果を残すことができました。そこで今回はメンバーのコメントを交えながら優勝までの道のりを振り返ります。
入社1~2年目の若手メンバーでチームを結成
新緑がまぶしい2024年5月、宇田CTOより社員3名に「第二回 電脳建築最適化 世界選手権」への参加提案がありました。メンバーに指名されたのは入社2年目の藤田拓実と柿沼優希、そして1年目の吉岡縁。1~2年目の若手社員でチームを結成した理由には、リソースにまだ余裕があり学びの機会にもなり得るだろうという経営陣の意向が絡んでいます。普段の開発案件とは一味違うコンテストへの挑戦。仕事ではない時間外のミッションとして3名のチャレンジがスタートしました。
藤田
そもそもこういう大会があること自体知らなくて。オンラインで集まって6月上旬には大まかなスケジュールとそれぞれの役割分担を決めました。僕は実装担当なのでとりあえず手を動かさなければならないということで。宇田さんには「優勝しますよ」と言っておきましたけど(笑)
柿沼
空調システムのことはほとんどわからなかったので、最初の1ヵ月半はエアコンの勉強期間に当てました。それと並行して大会用のエミュレータのリファレンスを読み込み、理解したことをわかりやすく社内Wikiにまとめていきました。
吉岡
僕はちょうど新人研修が終わったころに誘っていただいて、正直よくわからないままチームに加わった感じです。コードを書きながら環境を整備するとなると高いスキルが求められますが、そこは藤田さんがやってくれるので助かりました。
大会参加メンバー
藤田 拓実(ふじた たくみ)
2023年4月入社
長岡技術科学大学大学院(物質材料工学専攻修士)卒業
柿沼 優希(かきぬま ゆうき)
2023年4月入社
東京大学(文学部人文学科)卒業
吉岡 縁(よしおか えにし)
2024年4月入社
北海道大学(法学部)卒業
不満足率とエネルギー消費を下げるためには
電脳建築最適化という言葉しかり一般的にはかなり謎めいた大会だと思います。端的に言えば仮想オフィスにいる人たち(=執務者)が快適に過ごせるように空調システムを制御していくのがこの大会の課題になります。たとえば夏でも冬でも部屋のエアコンは自分好みに温度を設定するはずです。しかし会社のオフィスを想定した「第二回 電脳建築最適化 世界選手権」のVRF(Variable Refrigerant Flow)システムは家庭用エアコンと異なり、空調の専門知識と繊細な制御設定が欠かせません。ユーワークスの3名はどのようにアプローチしていったのでしょうか?
吉岡
決めた役割の通り、藤田さんが機械学習のモデルをつくり、柿沼さんが戦略を立案していました。毎週水曜日のオンラインミーティングで進捗報告を行い、その中で出てきた小さな課題解決については僕が担当しました。ミーティングは18時半から1時間の予定でしたが、20時とか21時まで伸びていくのが普通でしたね(笑)
藤田
快適性を上げるために二酸化炭素濃度が高くないかどうかの確認は必須です。室温にも人それぞれで好みがありますよね。特に夏場はエアコンの冷気が直接当たると不快に感じるとか。執務者は不満足率という情報を出してくれるので、それをチェックしながら調整していくことになります。
柿沼
僕はどうやって不満足率が計算されているのかを調べてみました。指標は4つありますが、その中でも二酸化炭素濃度と上下温度分布差の式がかんたんで制御しやすそうだったので、とりあえずその2つで0%を目指すことにして。第1回大会の数値を見る限り、不満足率が20%を下回ればいい成績を取れるだろうと予想しました。7月はプロトタイプを作成して目標値に近づけられるように頑張っていく感じで。ただそこからが長かったですね。というのも不満足率だけでなくエネルギー消費も下げなければならず、これらの両立には苦労しました。
全部門トップ、好スタートを切るも抜き返される
ミーティングとテストを重ねること約2ヵ月、ユーワークスの3名はついに大会本番を迎えました。開催期間は10月1日~11月1日の1ヵ月間。大学の研究室、建築会社やIT関連企業など総勢60チームがエントリー。全チームがオンライン参加で期間中にデータを送り、その都度の成績によって総合、省エネ、快適性といった各部門の暫定順位が決まる仕組みです。
藤田
大会は10月1日からはじまりますが20日までは練習期間みたいなものでして。ランキングを見ながら適時調整していくわけですが、開始直後の僕たちは全部門において1位でした。これなら楽勝かなと思いましたがすぐに抜かされてしまって。ちょっと手強いかもしれないと思いましたね。
差し馬作戦!?勝負は最後の最後に仕掛けるもの
いわゆる練習期間が過ぎ、終盤は各チームが追い込みをかけるため順位も激しく入れ替わります。そんな中、ユーワークスは可能性の高いデータを温存していました。問題はその切り札をどのタイミングで出すか。大会終了の1週間前、宇田CTOよりこの件について相談された吉本社長は競馬にたとえて「勝負は最後の100メートル。結局、差し馬が一番強い」と回答。吉本社長の助言は宇田CTOを通じてメンバーにも伝えられました。
藤田
競馬はやりませんが、その意味はすぐに理解できました。ただ僕はじっと待っていられない性分なので「早く全部出しちゃおうよ」と言っていたんですが、柿沼君に止められていた感じでしたね。
柿沼
この大会には総合、省エネ、快適性の3部門があって。本当に勝ちたいのは総合だったので省エネと快適性は30分前に出して、他のチームの気をそっちの方に向かせる作戦でした。そしてラスト10分で一番いいデータを提出して総合を獲りにいこうと。
吉岡
僕も柿沼さんと同じタイプなので異論はありませんでした。宇田さんから話を聞いたときは絶対にそうしなければならないというわけではなく、あくまでも相談ベースでした。3人で話し合って最後の最後に勝負を仕掛けようと決めたので、たぶん藤田さんも納得していたと思います。
差し切り成功!総合ランキング1位を勝ち取る
そして残り時間が少なくなる中、ギリギリのタイミングで差し馬作戦を決行しました。ユーワークスは予定通りのラスト10分で圏外から急浮上。さらに上位争いを抜け出してトップに立ち、逆転されることなく大会終了の時刻を迎えたのです。その結果、省エネ、快適性、総合の3部門を制覇、完全優勝を果たしました。
藤田
終了の12時を回るまでドキドキしながらその動向を見守っていました。1位になれた瞬間は嬉しかったですね。
吉岡
僕ができたことはそんなになかったですけど、宇田さんも含めて4人で優勝の瞬間を見ることができて本当によかったと思います。
柿沼
ラスト10分は他のチームもいいデータを出してくるので、抜き返されないか心配でした。まさに差し切ったという感じで作戦勝ちでしたね。
チームワークで獲得した賞金は3人で山分けに
今回の優勝で得たのは栄誉だけじゃありません。トロフィーのほか副賞として賞金も獲得しました。賞金はすでに受け取ったとのことですが、20代の若手社員には嬉しい臨時収入のはず。大会の感想とともにそれぞれの使い道を聞いてみました。
藤田
賞金は11月末に振り込んでいただきました。全部で35万円でしたがきっちり3分割しました。でも使い道はまだ考えていないんですよね。この大会でもそうでしたが、僕は立ち上げやスタートダッシュは早いんですけど、追い込みというかラストスパートのイメージがなかなか沸かなくて。なので、今回の優勝はいい経験になりました。
柿沼
登山靴を買いました。そんなに欲しいかったわけではなく、賞金が入ったので買っちゃおうかと。今まで普通の靴で行っていたので、これからはもう少し本格的な山登りに挑戦したいですね。今回は僕らと宇田さんの4人が関わって、いろんな分野でいいデータをつくることができました。総合は夏と冬の両方で順位が決まるので、どちらも見る時間を割けたのは大きかったと思います。
吉岡
僕がこんなにもらってもいいのかなと思いましたけど、ちょうど欲しかったモニターアームを選んでいるところでして。あとコンテストの打ち上げをやることになったので、その交通費などに当てるつもりです。今回一番勉強になったのは毎週のミーティングで宇田さんと先輩たちの議論を聞けたことですね。どういう点に着目してどのように仮説を立てるかとか。それから大会用の社内ミーティングスペースがあり、記事を読むことで情報整理のやり方がよくわかりました。
若さとチームワーク、そして終了間際の作戦で完全優勝を成し遂げたユーワークス。入社1~2年目の若手社員でも課題解決の力を十分持っていることが証明されたと受け止めています。また普段からリモートワークで業務を遂行しているため、オンライン開催された今大会でもその強みを発揮できました。第3回大会が開催されるようでしたら、新メンバーを加えたチームで連覇を目指したいと思います。