その失敗が国内の生産性低下にもつながるビッグプロジェクト

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プロトタイプを、成功への足掛かりに

事務所や病院、学校などの非住宅建築物を対象とした省エネルギー基準の見直しに伴い、その適合性確認のためのシステム開発をユーワークスが担当しました。開発は国土交通省による補助事業の一部として実施され、建築研究所の宮田さんと住宅の省エネルギー基準において同様のシステム開発実績があった当社の宇田、そして当時新人だった新井が開発を担当することになりました。過去に実績があったとはいえ、住宅と非住宅建築物ではそもそも構造的にまったく異なるため、システムも根本的に別もの。非住宅建築物では、部屋数が1000以上あるようなビルも含まれるため、入力項目も膨大な数になり、そのデータをどう扱うかなど、課題は山積みでした。当初は、ブラウザ上で操作が可能なプロトタイプを試作。しかし、テストをしてみると、項目の入力には気の遠くなる作業が必要なうえ、ブラウザのレスポンスの遅さも今回のシステムには不向きであることが判明。このプロトタイプの開発での経験が、のちの開発成功につながる糸口となりました。

 

日本の生産性にも関わるビックプロジェクトへの責任

ブラウザを利用するシステムであっても、データのコピー&ペーストが可能な最新のブラウザであれば実用可能でしたが、さまざまな人が利用することを考えると、ブラウザを限定することもできませんでした。そこで、エクセルファイルを配布して情報を入力してもらい、そのファイルをアップロードして計算する仕組みに変更。利用者がストレスを感じない仕組みを完成させました。 もし、このシステムを利用して不都合が起きれば日本の生産性が落ちてしまう重要なプロジェクトだとの認識があり、非常に大きな責任を感じていました。システムのせいで、建築施設の着工ができなかったなどという事態は絶対に避けなければいけません。ですから、エクセルにさまざまなマクロを入れるなど、入力をサポートできるところは、最大限サポートするように心がけました。

 

ソースコードが仕様書代わりの変則的な開発

このシステムは、建築業界全体が関わるシステムで、開発の直前まで議論される課題も多かったため、スピード感のある開発手法が必要でした。そこで、宮田さんが開発したプロトタイプのソースコードを読んで、当社の宇田がC#で再構築する変則的な開発手法がとられました。通常であればきちんとした仕様書があるべきですが、例外的な開発が必要だったこの案件では、宮田さんも「ユーワークス以外では対応は難しかったかもしれないですね」と前例のない当時の開発を笑顔で振り返りました。 この開発手法をとる上では、確実でスピーディーなコミュニケーションが欠かせないと感じ、宇田が使用を直訴したのがGitHub(ギットハブ)。このツールを使えば、ソースコードを変更した際に自動でサイト上に反映され、差分の情報を全員で共有することができます。これによって問題点まで上手に共有することができ、最初は言われるがままGitHubを導入した宮田さんも「あれがなければ大変だった」と開発期を振り返る通り、開発の効率は劇的にアップ。新メンバーであった新井もGitHubでソースコードを共有することができたので、スムーズに確実な仕事を行うことが出来たそうです。

 

研究から開発へ、システムを翻訳するプロフェッショナル

開発をともにしてみて、研究者でもある宮田さんのユーワークスへの印象は“IT技術だけでないエキスパート”。この分野の開発は少し特殊で、研究者と開発者が、お互いの気持ちを理解しないと良いものができません。研究という独特の世界から、開発へうまく翻訳する技術にも、高い評価をいただけたようです。改めて開発に携わった三人を見てみると、今後もきっとよい関係が続きそうです。流行の最先端のような派手さではなく、日常生活を支えるようなシステムが好みの宇田。今回は非住宅建築物の省エネルギー基準を確認するために限られたシステムでしたが、この実績を活かして、今後は実際の生活のなかで省エネに直接役立つツールなどをつくっていきたいとも考えています。

 

取材を終えて、わたしたちが感じた事

笑いと共に振り返る場面もあったものの、規模の大きいプロジェクトだったことから、進行している当時の緊張感たるや相当なものだったことが実感できる取材でした。蛇足ですが、宮田さんと宇田はお子様の年齢が近いようで、撮影の合間に子育て話に花を咲かせていたのも印象的でした。


独立行政法人建築研究所 環境研究グループ研究員 宮田 征門さま

住宅・建築・都市計画技術に関する研究開発を行う建築研究所に勤務。国の省エネ基準見直しに伴い、建築施設の基準の適合性を確認するシステムの開発を担当している。
(2012年10月25日現在)